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​大インド刺繍展

 [今月のすぺーすくじら」は大インド各地の刺繍衣装を展示しております。刺繍は紀元前2500年の縫い針が発掘されたインダスインドの遥か昔から現代に至るまで、悠久の時をかけて受け継がれてきました。インド各地の伝統の技と祈りのこもった多様なデザインは見飽きることがありませんでした。ご一緒にお楽しみいただければ幸いです。

2026年3月15日よりネットギャラリーにて公開

GALLERY 

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 インド北西部やパキスタンのシンド地方などの遊牧文化の残る所に素晴らしい刺繍が残されています。刺繍はそれぞれの部族のシンボル、魔除けや豊穣を意味する文様を表す為に使われるようになります。晴れの日、婚礼時には特別、贅を尽くした衣装が作られ婚礼の持参品として一生分の衣装や袋物、壁掛けなどが作られました。母親は子供の無病息災を祈って長命の老人の衣装を少しずつもらって接ぎ合わせ魔除けにしたりしました。刺繍にはこのように女性が家族のためにコツコツと農閑期や家事の合間に刺すものと王族や富裕層のために刺繍専門の職人の絹サテンに絹糸や銀糸を使った豪華なものがありました。また家庭で婦人たちの手で作られるものの中に使用済みの衣装を再利用して作り上げるカンタやパッチワークがあります。東部のベンガル州やバングラデシュで作られたカンタは使い古しの白のサリーや腰巻を4~5枚重ねて縫いしめ大きな樹木や鳥等、身近な素材を刺繍したものでリサイクルの枠を超えた豊かな創造性があります。

    手仕事の宝庫だったインドも近代化と共に母から娘へと伝わってきた針仕事は急速に失われつつあります。しかし、伝統の衣装こそ減りましたが、政府やNGOの努力によって手仕事商品作りに活かされ、都会の女性も伝統的手仕事に興味を持ち、インド各地に広まったのは素晴らしいことです。

「対話する布」岩立フォークテキスタイルムミュージアムより

大 インド各地の刺繍技法

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   ヒマーチャル・プラデッシュ州チャンバ(Chamba)の儀礼用掛け布ルマルは繊細な手紡ぎ木綿で手織りされたモスリンに熟練した女性の手により、破綻なくダブルサテンステッチで精緻に両面刺繍されています。クリシュナ神と恋人ラーダーのロマンスが叙情豊かに描き出されています。

横146cm×縦117cm 

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 パキスタン北部の山岳地帯、ハザラ地方の女性用ヴェール。花嫁が婚礼時に用意し、その後も晴れ着として大切にされます。白の木綿地に濃いピンク色を主とした真綿糸を用い表面のみに糸がわたる手法で精緻な文様を刺し、文様は花の開いた様子を幾何学的に表したものです。独特の濃いピンク色は19世紀の中頃に開発された合成染料によるものですがパキスタン北部一帯で好んで使われています。

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 ジャイプールの貴族のショールや掛布は無地カシミア地に金糸の駒取り繍いが施されます。「赤色のものは葬式の時死者の体を覆うのに用いるもの、貴族の家には人が死んだときの贈り物にするために常にこのような裂が準備しておいてあった」と山邊知行コレクション「インド染織」(源流社)にあります。

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 ベンガルの女性たちの圧倒的な針仕事「カンタ」を観たのは岩立ミュージアムでのことでした。「カンタ」はあらゆる階層や宗教、年齢の女性たちによってつくられ、継ぎ接ぎ布には他人の邪悪な視線から身を守る力があるとされています。売買されることは殆どなかったそうですが、今年2月のNPO法人シャプラニールの展示販売会で手に入れた大きなベットカバーです。

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 カッチ及びサウラシュトラ地方の宮廷・貴族階級用として職人集団「モチ共同体」が作製したスカートです。手織りシルクサテン地に、タンブルワークでムガル文化の影響を受けた植物紋様とオウムなどの吉祥文様が細密で美しく描き出されています。このような宮廷刺繍は20世紀初期には終焉を迎え残存作品は僅かとのことです。スカート丈95cm

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 臙脂虫の綿絞り布に手紡ぎの太めの絹糸を使って刺繍された「チョリ」です。カッチ地方のこの様な刺繍はムガル帝国や東インド会社の交易品として注文されていたようです。バーゼルの民族学博物館に同様の刺繍チョリーが収蔵されていて「回教徒ハリプトラ族使用?」との記載がありました。

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 北インド、シュリーナガル貴族の上着「チョーガ」です。チョーガは、トルコ・アフガンの宮廷衣装の影響を受けた貴族男性衣装ですが、これをパシュミナで作製したことに地域の独創性が感じるとのことです。綾組織のパシュミナ地にステムステッチとダーニングステッチでボテ(ペーズリー)や花唐草が格調高く刺繍されています。サイズと色柄の意匠から若年者用と入手時に聞きました。胸周り112cm、着丈78cm

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 インド辺境ナガランド州の山間部でくらすナガ族は自然採取・農耕を営み手工芸に秀でた民族です。織物は女性の仕事で、手紡ぎ糸を植物染料で染め腰機で織ります。古くは犬や山羊の赤毛が使われていたことが知られていますが近年のショールはアクリル毛糸の手織りです。刺繍はロングステッチでナガ族のシンボル動物たちと勇敢さを表す戦いの槍を妻あるいは娘が刺したものです。雄鶏は幸運のシンボルとされているそうです。

 参考資料
​  「対話する布」岩立テキスタイルムミュージアム
​  「世界の刺繍」文化学園博物館
​  「インド染織」山邊知行コレクション(源流社)

  「インドの伝統染織」バーゼル民族学博物館蔵

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