top of page

「今月のすぺーすくじら」はミャオ族、トン族を中心に貴州省に暮らす少数民族の背負い帯を展示しております。世界各地の子守帯の中でもこの地域のものは特別に手間隙かけて作られたものです。また貴州省には実に多彩な背帯が存在していたことも知りました。初めて目にしてから20年の月日が過ぎてもコレクションできたものはまだ充分とは言えませんが、長年温めてきた企画を実現することができて嬉しく思っています。

貴州省の背負い帯展

2022年5月1日よりネットギャラリーにて公開

GALLERY 

Anchor 3

 「背帯とは、幼児を背負うためのおぶいひものこと。幼児を包むおくるみに、ひもや帯が縫いつけられている。ミャオ族の子どものための背帯は、婚家にくる前から作り始めるのが普通だったほど、時間をかけてつくられる。刺繍やろうけつ染め、織物などのテクニックを駆使してさまざまな護符が装飾されている。地域によってフード(背蓋)つきだったり、四角形や奴凧型など、タイプはいろいろ。銀飾りがついたものを使っている人もいる。」と教えて下さったのは苗族刺繍博物館の佐藤瑞代館長、4年前に常滑を訪れて背帯コレクションを見せていただいたことが懐かしく思い出されます。

  さて刺繍で装飾された作品が多い背帯ですが舟渓(ジョーシー)ミャオ族の背帯は中央部に配された驚くほど繊細な浮織模様が際立っています。織布には連続する菱形の中にミャオ族の祖とされる蝶をはじめとして鳥、カニ、棕櫚、杉、楓、蕨、唐辛子等々から9種類の護符文様が織り込まれているそうです。目の届かない背中側を神さまやご先祖さまに守ってもらい、また祝福を与えてもらうためです。貴州省では各民族の伝統の意匠で彩られた多彩な背負い帯が作られていて圧倒されます。背帯の帯部分は「へその緒」といわれ大切にされ、譲り渡すときには帯部分は切り離されることが多いようです。使い込まれた背帯の役目を解かれた佇まいにこの上なく愛しさを感じています。

 背負い帯の手仕事

CIMG7455_edited.jpg

台江ミャオ族の背帯は組紐をねじらせて立体的に綴付けた蝶文様や魔除けの多数のスパンコールで子を護ります

CIMG0241_edited.jpg

貞豊ミャオ族の四角のフード(背蓋)は藍染布にミクロの細かさのクロスステッチで鳥や草花が刺繍されています

CIMG0296_edited_edited.jpg

 三都スイ族の古い背带、羽根を広げた蝶は眩しい日差しから子を守り、銅のスパンコールは魔を除け無病息災を祈ります

CIMG7403 (2)_edited.jpg

黄平ミャオ族のねんねこは菱格子状の緯紋織の中に多色の絹糸で小紋の吉祥文様が刺繍されて瑞々しい印象です

CIMG7457_edited.jpg

上部に小ぶりの四角が2ヶ所、下部に大きく1ヶ所の四角のデザインは織金ミャオ族の背帯の特徴のようです。

CIMG0232_edited.jpg

 安順地区普定県のミャオ族の背帯は蜜蝋を蠟刀で下書きもなく手描される。藍染、脱蠟後に現れる繊細な線描は見事です

CIMG0313_edited_edited.jpg

 太陽紋の背蓋つき黎平トン族の背帯、織文様と見まごうほど緻密な刺繍吉祥文がピカピカ布(亮布)に施されています

CIMG0267_edited.jpg

 舟渓ミャオ族の背帯は三枚の布で構成され完品は5mもの長さとなります。中央布には驚くほど繊細な護符紋様が織込まれています

 

bottom of page