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​2022年7月10日よりネットギャラリーにて公開中

 憧憬のインドネシアⅠ バリ島 

 バリ島の伝統布グリンシンを深く知りたくてトゥンガナン村を訪ねたのは2011年の暮れ・・・島では伝統衣装を身につけ祈りをささげる人々の姿に刺激をうけました。以来、バリ島への憧れは途絶えることなく長い時がすぎました。幸せなことに手元には良い布が日本にいながらにして集まり今回の企画展を実現できました。お楽しみいただければ幸いです。

 2022年7月12日よりネットギャラリーにて公開 

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 しばらくして火葬場への行列が始まった。女性たちはお供え物を頭にのせ、一列になって進んでいく。白い頭巾をかぶり、白と黒の市松格子の布を腰に巻いた、ズボン姿の男たちが槍を持って続いた。絣の布を肩にかけている。腰に巻いた市松格子は「カンべン・ポレン」と呼ばれ霊力を持つ魔よけの布だという。 白と黒は天と地、善神と悪神、太陽と月、男と女,冷暑など自然は両極から成り立つというバリ人の二元的世界観をあらわしている。バリ人はこの二極間の調和を保つため数々の儀式をおこなう。

 花模様の緯絣(よこがすり)のサルン(腰衣)をつけた男たちがガムランを担いで演奏しながら進み、牛の棺が続いた。その後ろから金紙や色紙で装飾された高い火葬塔を男たちが担ぎ、魂が戻れないよう道を練り歩きながら進んだ。後を追いかけ火葬場に着くと、すでに火葬台の上に遺体を納めた牛の棺が並べられ、花や布に包まれていた。僧侶によるお祈りが終わると、順に火がつけられた。ガムランが激しく奏でられ、槍を担いだ男たちが「パリス」という呪術的な踊りを勇壮に踊った。

 引き上げる男性を引きとめ、肩にかけた布を見せてもらった。ガーゼのように薄い木綿の布である。男は「この布はトゥンガナン村で織られたグリンシンです。無病息災のお守りです」と大事そうに布に手をあてた。「グリンシン」はバリ語の長い病グリンと否定語のシンの合成語と後で知った。   渡辺万知子著『染織列島インドネシア』より

バリ島伝統染織の技法

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トゥンガナン村の伝統儀礼に用いられる男性用の肩掛けグリンシン アリランと呼ばれる経緯絣布、織り上がったままの輪状を切断せずに首から掛けて着装されたものです。今回は武居郁子さんの「バリ島服飾文化図鑑」を参考に着装してみました。モチーフはSanan empeg Waton(20×80)

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タバナンの「ワンスル」という儀礼用布、手紡ぎ糸と天然染料100%の縞織布、霊力の強い布として通過儀礼時には必ず身に着けていたもので、ボロボロになるまで繰り返し使用された後捨てられて古いものは希少です(30×60.5cm)

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 カランガセムで入手の木綿の緯絣チュプック・バリ、一般にはパトラサリーに影響された絹のチュプック・サリが主流、こちらはオランダから輸入された化学染料を使用しているようにおもいます。魔除けや病気治療のために切り分けされたためオリジナルサイズのものは希少です。(76×243cm)

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 悪霊から身を守るとされる儀式用の絹緯絣「エンデック Endek」と呼ばれる布、用途は女性用の胸布、緻密に表現されたパトラ紋様からはヒンズーバリの雰囲気が感じられます。(60×212cm)

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ジャワ島で作られた絹バテック「ロチャン」はレンバンの港を経由してバリに渡り胸布、肩掛けとして使われていました。そのためこの布はバリ島では儀礼用の聖なる布「カイン・レンバン」と呼ばれました。(52×170)

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シガラジャで入手の赤と白のポレン(poleng)格子の中に金属糸による縫取り文様や両端の金糸の繊細な縫取り織りが美しく豪華な様子です。赤と白のポレンは創造主であるプラフマー神に捧げる儀式でカースト身分の高い男性がアウタースカート(saput songket)として使用されたもの (112×184cm)

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ヌサペニダのクリン(keling)という儀礼用布、20世紀初頭の古布で昔儀式で使用されていた輪状のまま、一本一本太さが違う手紡ぎ木綿糸で美しい縞が織り込まれている kelingはインドあるいはインド商人を意味している?(44.5×76㎝)

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 クルンクン入手のチュプック(儀礼用腰衣)19世紀に遡る古布です。その上、非常に細い樹皮繊維(パイナップル繊維?)と天然染料100%で染め分けられた緯絣織は非常にレアな作例 です(90×134cm)

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ヌサペニダで作られた女性の儀礼用布「チュリック」(チャガワン)隙間が空いた織り方はオランダのレースやネットのような生地に触発されたようです。極細の木綿を手間隙かけて手織したもので霊力があると考えられ胸布や帯として火葬式でも使用されるもののようです(43×204cm)

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シガラジャで使用されていたヒンドゥーバリの儀礼用絹バテック布「カイン・レンバン」、こちらは中央の長方形部分が絞染めのレアなものです。その上に地模様とは異なった草花紋様で印金がシガラジャで施された特別に煌びやかものです。(54×332㎝)

 

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