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 カリマンタン・スラウェシ・スンバワの三島巡り 

 今月はインドネシアのコレクションからレアな上記の三島を取り上げます。始まりは退職の記念に頂いた絹絣のショール、マレーシア側の工房で染め織られた美しいプアクンブの新作でした。以来12年が過ぎましたが、この間に三島の伝統染織品を漸く30点蒐集することができました。お楽しみいただければ幸いです。2021年11月1日よりネットギャラリーにて公開いたします。

GALLERY 

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   今回の企画は最近手に入れたインドネシアの素晴らしい染織品をご紹介したいと思い準備いたしました。一つはボルネオ島(インドネシア名カリマンタン島)のカントゥ・ダヤク族の儀礼用褌、もう一つはスラウェシ島のサダン・トラジャ族の7mもの儀礼用の幡、そしてスンバワ島の婚礼用のサロンです。これらの作品は部族に特有な模様が表され現地で大切に使用されていたものでした。染織方法はそれぞれ異なりますがいずれも祈りのこもった手間隙のかかったものです。

 中でもスンバワ島のものは目にする機会が限られていて渡辺万知子先生の展覧会で数年前に拝観しただけでした。先生の著書「染織列島インドネシア」にスンバワ島西部のプサール王家のラジャの親族を訪ねた時の記載があり、「息子と娘に着せましょう」と代々伝わる金の装飾品と婚礼衣装を着装してもらった貴重な写真が掲載されています。イスラームの影響を受けた美しい衣装の写真は長く記憶に残っていましたがまさか実物をコレクションできるとは光栄で幸せなことでした。以下はこの衣装を東スンバワで蒐集された先輩コレクターから私が引き継ぐ際に教え受けた説明です。

 「非常に繊細な手紡ぎ木綿を天然染料で染め、織られた20世紀初頭の古布です。この布の素晴らしいところは,銀糸ではなく,小さな銀板を1つずつ布に縫い付けて紋様が形成されていることです。恐ろしいほど気の遠くなるような作業です。一般庶民の布には,このような仕事は行われることなく,布の表面、裏面の細部に至るまで全く手抜きの無い素晴らしい仕事がなされた布です。スンバワのこの布は,おそらくもう二度と実物を手にすることができない布だと思います。王妃の布にふさわしい堂々とした存在感のある見事な布です。探しても無いこの布を所有できる方は,私は心から幸せだと思います。」

伝統染織品の技法

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西カリマンタン島のカントゥ・ダヤク族 手紡ぎ木綿経絣 儀式用の大きな赤い布プアクンブ(Pua kumbu)70×191

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カリマンタン島イバンダヤク族、男性祈祷師の肩掛け(Dandong)祖先像や蛇の紋様がピリー織(pilih)で織り込まれている。158×62㎝

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 カリマンタン島東部タンジュン・イスイのプヌアク・ダヤク族女性用腰布、キンバイザサの繊維を合成染料で染色   鉤 菱形 三角を基本として祖霊やワニ、トカゲなどが経絣であらわされている 94×75cm

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 西スラウェシ州カルンバン(マッキ)人の手による、儀礼用布ポリ・シトゥトゥ(Pori Situtu)、自家栽培された木綿と植物染料で卓越した織り手による見事な幾何学文様のデザインの経絣布、婚資や葬祭儀礼に用いられた。230×145cm

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南スラウェシ州ロンコン人(Rongkong)の手による、手紡ぎ手織木綿布の絞染め幡”ロト(Roto)はトラジャ人が儀礼用幡として大判で作られ代々受け継がれていた。染めには藍と朱赤の天然染料が用いられ、こげ茶はその掛け合わせで表現される。

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スンバワ島西部サマワ,プサール王侯階級の女性用の腰衣(サロン)蘇芳?の赤と藍染 手紡ぎ木綿  気の遠くなる数の銀板を1つずつ布のうら、表に縫い付けて紋様が形成されている 118×101cm

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カリマンタン島サラワク州イバン・ダヤク族 祈祷師用の袖無し衣装“バジュ・マナン(Baju manang)自家栽培の手紡ぎ木綿糸で聖鳥のモチーフの経絣、後身ごろの裾に装飾された綴織は権威者の象徴

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西カリマンタン、カントゥ・ダヤク族、儀式用褌(Sirat)緑や白い糸は現地の手紡ぎ木綿糸、朱色は輸入絹糸で精緻で美しく織られている。約4m×28cm

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 西スラウェシ州カルンバン(マッキ)人の手による、儀礼用の木綿経絣布セコマンディ(Secomandi)、祝祭及び葬祭儀礼用として用いられるとともに、交易布としてタナ・トラジャにおいては聖布マアに類する伝世品として保管・継承されている。

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南スラウェシ州サダン・トラジャ人の儀礼用幟旗サリタ(Sarita)、伝統家屋トンコナンの高い屋根から豊穣や長寿を願って吊り下げられた。様々な吉祥文様が一枚の布に描き込まれている。防染には蜜蝋以外に天然の樹脂が用いられている 724×35cm

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スラウェシ島南部センカン地方ブギス人 儀礼用絹緯絣腰衣 緯糸の染め分けは括り染、摺り込み染の両方が行われている。116×86cm

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スンバワ島の女性用腰巻 素材は木綿で、非常に繊細な手紡ぎ糸で織られ、中央部には、銀糸によるたいへん緻密な縫取織がなされている 129㎝×87.5㎝

 

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